第7話 迫る追っ手
「将監、小栗殿に何をする!」と一度に酔いの覚めたお殿様が言いました。将監は「この国は、今日からワシの物じゃ」といきなりお殿様に切りつけたのです。お殿様は不意をつかれ、かなりの深手を負ってしまいました。それでもてるてひめ照手姫とお母さんを何とか逃がすことができました。
しかし、お殿様は力つきて息を引き取ってしまったのです。
将監はさらに、お殿様の家来も皆殺しにしました。そして、照手姫たちへ追っ手を差し向けたのです。
照手姫とお母さんは、月も出ていない暗い夜道を手をしっかり握り合って相模川に沿って、海に向かって走りました。
一方、将監の追っ手は着々と二人に迫ってきます。とうとう二人は、崖っぷちで追いつかれてしまいました。
「照手姫、お父上は亡くなりました。この国はすでに将監様の物です。姫も将監様へ嫁いでいただきます。」
「いやです!私は小栗様と将来を誓い合っているのです」
「ガッハッハ、気の毒だが、頼みの小栗も、もうこの世におらぬ」
これを聞いて照手姫は、気を失いそうになりましたが お母さんが手をしっかり握り体を支えてくれたので何とか気を取り直すことができました。
ところが追っ手がつかまえようと、伸ばした手を振り払ったはずみで二人とも、崖から真っ暗な川へと落ちて行ってしまったのです。