第3話 恋がめばえる
小栗判官は、小栗満重(おぐりみつしげ)という武士の息子で、京の都で生まれました。
子供の頃はわんぱくな子でしたが、今では、強く賢い武士に成長し、常陸の国を治めていました。
その夜、空にはきれいな満月が出ていました。
小栗は、小川で見かけた姫のことを想い、大きな榎木(えのき)の下で笛を吹きました。
その木は、幼かった照手姫が植えた杖の成長した姿でした。
小栗の笛の音もまた、人々の心を深く感動させるものでした。
音色に心をひかれ照手姫は、そっと屋敷を出て、笛の音のする方へと歩いていきました。
そこには、榎木の下で笛を吹く武士の姿がありました。
小栗の想いが通じたのでしょうか。
小栗も月の光に照らされた美しい姫の姿を見つけたのです。
照手姫も笛が上手で立派な小栗にたいへん心をひかれました。
榎木が見守るなかで照手姫と小栗判官は運命的な出会いを果たしたのです。