第11話 小栗、蘇生する
ここは、熊野本宮湯の峰温泉 つぼ湯です。その湯は万病に効くといわれています。
岐阜を出発した照手は、五日後には萬屋(よろずや)にもどらなくてはなりませんでしたが、
餓鬼阿弥となった小栗の土車は、道すがらの、心優しい人々によって、熊野湯の峰温泉に、四百四十四日かけて、たどり着きました。
なんと不思議なことでしょう!
餓鬼阿弥すがたの小栗は、湯につかること七日で、両目が開き、十四日目には、耳が聞こえ、二十一日目には、口があき、四十九日目には、元の元気な小栗となりました。
元通りの姿になった、小栗は、閻魔大王の特別な計らいや、道すがらの人々、そしてやさしい常陸小萩(照手)に、心から感謝しました。